大判例

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東京地方裁判所 平成元年(特わ)1980号 判決

本店所在地

東京都中央区日本橋茅場町一丁目四番四号

三協エンジニアリング株式会社

(右代表者代表取締役 宮崎貞夫)

本籍

同都目黒区下目黒四丁目八四四番地

住所

同都同区下目黒四丁目二二番一六号

会社役員

宮崎貞夫

昭和一〇年一月一七日生

本籍

同都大田区南雪谷四丁目七〇〇番地

住所

静岡県熱海市春日町一六番四五号

熱海プラザC棟五一六号室

会社役員

前田秀雄

大正五年四月二八日生

右三名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官渡辺咲子出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人三協エンジニアリング株式会社を罰金二億五〇〇〇万円に、被告人宮崎貞夫を徴役二年六月に、被告人前田秀雄を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人前田秀雄に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人三協エンジニアリング株式会社(以下「被告会社」という。)は、東京都中央区日本橋茅場町一丁目四番四号に本店を置き、有価証券の売買等を目的とする資本金三〇〇〇万円の株式会社であり、被告人宮崎貞夫(以下「被告人宮崎」という。)は被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているもの、被告人前田秀雄(以下「被告人前田」という。)は不動産売買等を目的とする共和興業株式会社(以下「共和興業」という。)の代表取締役をしているものであるが、被告人宮崎及び同前田は共謀の上、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、有価証券売買を架空名義で行うとともに、共和興業と有価証券の相対取引を仮装し架空売却損失を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、昭和五九年一〇月一日から同六〇年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二二億四二〇六万六六二八円であった(別紙1修正損益計算書参照)のにかかわらず、同六〇年一一月二七日、東京都中央区日本橋堀留町二丁目六番九号所轄日本橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二四万四一一一円で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(平成元年押第一三〇八号の1)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額九億六〇八二万一五〇〇円(別紙2脱税額計算書参照)を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告会社代表者兼被告人宮崎及び被告人前田の当公判廷における各供述

一  被告人宮崎及び同前田の検察官に対する各供述調書

一  今野勝勇、松永晴夫、石崎藏及び片岡一九の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  有価証券売上調査書

2  有価証券仕入調査書

3  給料手当調査書

4  旅費交通費調査書

5  通信費調査書

6  租税公課調査書

7  接待交際費調査書

8  事務用品費調査書

9  賃借料調査書

10  雑費調査書

11  受取利息調査書

12  受取配当金調査書

13  雑収入調査書

14  支払利息調査書

15  為替差損調査書

16  事業税認定損調査書

17  品貸料調査書

18  広告宣伝費調査書

19  品借料調査書

20  雑損失調査書

一  検察事務官作成の捜査報告書

一  収税官吏作成の領置てん末書及び捜索差押てん末書

一  登記官作成の各商業登記簿謄本

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成元年押第一三〇八号の1)、総勘定元帳一綴(同号の2)及び銀行預金帳一綴(同号の3)

(争点等に対する判断)

一  事務所等諸経費について

被告会社代表者兼被告人宮崎並びにその弁護人ら(以下「弁護人ら」という。)は、「被告会社が椿産業株式会社(以下「椿産業」という。)と共同で使用していた事務所等の経費として事務所賃借料月五万円、水道光熱費月約五万円、電話料金月約八万円があり、右諸経費のうちその半分は被告会社が負担すべきものであるから、事務所賃借料月二万五〇〇〇円、水道光熱費月二万五〇〇〇円及び電話料金月四万円の年合計一〇八万円の経費を被告会社の損金として計上すべきである。」旨主張するので検討するに、前掲各証拠によれば、被告会社が椿産業と共同で所論の事務所、水道、電気、電話等を使用していた事実は認められるものの、被告会社及び椿産業の代表取締役は、いずれも被告人宮崎であること、被告会社と椿産業との間には、右事務所、水道、電気、電話等の使用に関する経費の負担につきなんら取決めはなされておらず、椿産業は独自に右経費の全額を支払い、経理上も税務申告上もこれを自社の損金として計上していること、被告会社もまた、その支払を申し出ず、経理上も税務申告上もこれを自社の損金として計上しなかったことが認められ、右事実によれば、被告会社が右事務所、水道、電気、電話等の使用につき、事実上便益を享受してはいても、その経費を自ら支払う義務を負担していたものではなく、右経費は全額椿産業の損金であると認めるのが合理的であり、弁護人らの主張は理由がない。

二  雑収入について

弁護人らは、「雑収入中、迷惑料六億八九〇七万一六五三円は、大和証券株式会社(以下「大和証券」という。)による大和ビル管理株式会社(以下「大和ビル管理」という。)の株式売買益の一部が大和証券及び被告会社が利用している被告会社名義の預金口座に残っているだけであり、未だ被告会社の収入とは認定できない。」旨主張するので、この点について検討するに、前掲各証拠によれば以下の各事実が認められる。

1  被告会社は、昭和五六年ころから、大和証券に帰属するいわゆる「簿外損失」を自社の公表経理に受け入れることとなり、大和証券の責任と計算において資金を調達し、右資金を用いて大和証券の顧客等から相対取引により有価証券を市場価格より高い価格で買い取り、それを市場価格で売却する方法を用い、大和証券の簿外損失を引き受け、右資金調達や有価証券取引等を三井銀行日本橋支店の被告会社名義の預金口座を利用し、同口座に損失が移し替えられたこと

2  大和証券は、被告会社に預けた右「簿外損失」を解消しようと、被告会社名義で右口座を利用して有価証券取引を行うなどしたが、右損失を減少させることができず、同五七年末被告会社に対する税務調査の結果同五八年四月には大和証券の右簿外損失が税務当局に明らかになったこと

3  被告会社は大和証券の調達した前記資金を利用し独自に有価証券取引を行っていたが、大和証券もこれを知るに至ったこと

4  大和証券は、昭和五九年一一月になり、同社所有の大和ビル管理株を被告会社に譲渡した上、転売させ、その売買差益約一一二億円により右累積した簿外損失を消滅させ、被告会社との関係を清算しようと計画し、その処理のため、事業法人第一部部長松永晴夫(以下「松永」という。)を被告人宮崎との交渉にあたらせたこと

5  松永は、被告人宮崎に対し、被告会社が右損失を受け入れ、銀行取引等の面で種々の不便を受けたことに対する賠償金、被告会社が昭和五八年四月更正決定を受けるなどしたことに対する精神的慰謝料、今後マスコミ等に右「簿外損失」を公表しないための「口止め料」等の趣旨で、「迷惑料」として五億円の支払を申し出たが、被告人宮崎は、かねてより右口座の大和証券の資金を利用して被告会社独自で有価証券取引を行っていたため、今後右資金が利用できなくなれば資金繰りにも困る上、大和証券の計算でする有価証券取引と混在していた右取引が顕在化し、右簿外損失に隠れていた被告会社の取引による利益も一挙に表面化することやいずれ大和証券が右損失を解消するために行うと考えていた方策に被告会社も加わり巨額の利益を上げようと考えていた目論見が実行できなくなることなどから、右計画に難色を示したこと

6  そこで松永は、被告会社等被告人宮崎の関係会社が、国税当局の更正決定を受けて支払ったという一億八〇〇〇万円を加え、計六億八〇〇〇万円の「迷惑料」を支払うことを申し出て、被告人宮崎も右金額を了承するとともに、大和証券に対し従前大和証券が資金調達のため借り受けていた債券等約三〇億円分につき、昭和六〇年三月まで被告会社の有価証券取引資金として利用できるようにしてもらいたいと申し入れ、松永はこれを承諾し、大和証券も了承したこと

7  大和証券は、昭和五九年一二月、大和ビル管理の株式の単価等を検討の上、前記方法を用いて被告会社名義の株式譲渡益で累積した簿外損失を解消するとともになお相当の益を残した上、前記約定に従い引き続き資金を提供し、同六〇年二月と三月の二回にわたり右口座上の残金を迷惑料六億八〇〇〇万円にするため被告会社名義で利付国債の取引をし、資金工面の現先利息等を支払った上、同六〇年三月二〇日右口座に計算上迷惑料分六億八九〇七万一六五三円が残るようにして被告会社との関係の清算を申し出たが、実際には大和証券の従前の取引途中に計算違いがあったため、右口座には八億四六二七万四一八五円が残り、そのころ被告人宮崎から引き続き右債券等約三〇億円をその借受期間まで利用させてもらいたいと依頼され、これを承諾し、同年九月まで利用させたこと

8  被告人宮崎も後に大和証券から報告を受け、右迷惑料として結局六億八九〇七万一六五三円が右口座に残されたことを了解していたこと

以上の事実によれば、被告会社名義の右預金口座について、従来は大和証券と被告会社がそれぞれの有価証券取引のため共同でこれを利用していた事情はあるにせよ、大和証券が昭和五九年一二月以降は右口座を利用した新たな取引をしておらず、昭和六〇年三月二〇日には右口座に迷惑料分の金額を残して右口座の利用関係を清算する旨申し出た経過に照らすと、右口座は同日以降はもっぱら被告会社の利益のため利用する目的で存続していたものと認めるのが合理的であり、従って、大和証券が計算し、被告人宮崎も了承した迷惑料六億八九〇七万一六五三円に相当する金額が右口座に残された事実は、右金額が迷惑料として大和証券から被告会社に対し被告会社が管理する預金口座に残す形で支払われたものと認定判断することができ、弁護人らの主張は理由がない。

三  支払利息等について

弁護人らは、「大和証券は、昭和五九年一二月までに前記『簿外損失』を解消し、右口座を利用する必要性は全くなかったのであり、同六〇年一月以降は、大和証券の承諾の上、実質上被告会社のみが右口座に残された資金を自社の有価証券取引等のため利用していたものであるから、昭和六〇年一月三一日、同年三月一一日、同月二〇日に支払った現先利息計八二一四万四五〇七円及び同年一月以降の期間に対応する品借料は、被告会社が負担すべきものであり、経費として計上すべきものである。」旨主張し、また被告人宮崎はこれに加え、「昭和六〇年一二月以前に被告会社が右口座の資金を流用した分に相当する現先利息等も、被告会社が負担すべきものである。」旨供述するので以下検討する。

前掲各証拠によれば、以下の各事実が認められる。

1  大和証券は、かねてより被告会社に預けた「簿外損失」を解消するために被告会社名義で有価証券取引等を行っていたが、その資金は関係会社から被告会社名義で現金または債券を借り受け、借用した債券は現先取引により売却して資金を調達し、他方、右現金借入に対する支払利息、債券借入に対する「品借料」、債券の現先取引における利息相当額にあたる「現先利息」をそれぞれ支払っていたが、右有価証券取引、資金調達とその費用の支払などは被告会社名義の前記口座で行っていたこと

2  被告会社は、以前より大和証券に無断で右口座の資金を自社の有価証券取引等のため一部流用しており、大和証券が右事実を知った後も、同社から被告会社の独自取引分に相当する現先利息等の支払を求められず、前記二の4ないし6の松永と被告人宮崎との「簿外損失」解消交渉により、大和証券が借り受けた債券等約三〇億円を引き続き利用できることになり、右口座の資金を自社の取引に利用していたこと

3  大和証券は、昭和五九年一二月右「簿外損失」対策実施後被告会社の要請に応じ、約三〇億円の資金を右口座に残したが、同六〇年三月二〇日までの現先利息等を支払った上、利付国債取引をして調整して迷惑料金額を右口座に残し、被告会社との関係を清算し、再度の資金提供の要請により引き続き約三〇億円の資金を利用させることにしたこと

4  被告人宮崎は、大和証券が同六〇年三月迷惑料を支払い関係を解消するまで右現先利息等を大和証券が全て負担している内容の報告を受けていたが、その当時被告会社が運用したものに対応する現先利息等の費用の分担を前提に迷惑料との清算を申し入れず、その後本件発覚に至るまで大和証券に対し、右日時までの現先利息等の支払を申し出たことはないこと

5  大和証券は、本件発覚後においても、被告会社に対し、同六〇年三月二〇日までの右現先利息等の支払を求める意思はないこと

以上の事実によれば、被告会社が従来前記被告会社名義の預金口座の資金を利用して自社の有価証券取引を行っていたことは認められるものの、大和証券が被告会社に対し現先利息、品借料等の右有価証券取引の費用の支払を求めたのは、被告会社との関係の清算を申し出た昭和六〇年三月二〇日以降分のことであり、同日以前分の費用については、大和証券は全額独自に支払済みで、被告会社独自の取引を知った後も、右費用の負担を被告会社には求めなかったこと、被告会社もまた、大和証券に対し、右費用の負担を申し出ず、支払をしないまま大和証券との関係を解消したことも明らかであり、右経緯に照らすと、昭和六〇年三月二〇日までに支払われた現先利息等の費用は、大和証券において負担する旨の黙示的な合意がなされ、これに従った処理がなされたものと認めることができる。結局、同日以前に支払われた現先利息その他弁護人主張の支払利息、品借料等の費用は、いずれも大和証券の負担に帰するもので、被告会社の経費として計上することはできないと言うほかはなく、弁護人らの主張は理由がない。

四  被告人前田の取得分について

弁護人らは、「被告人前田が取得した約一億円は、その金額が利益の一定比率で決定され、共犯者間において配分されたものであり、被告会社は被告人前田の取得分を控除した残額しか現実には受け取っていないのであるから、右被告人前田の取得分を被告会社の益金として計上すべきではない。仮に右金額が益金に計上されるにしても、現実に有価証券取引の外形が存在する以上、右金額は損金としての性格を有している。」旨主張するので検討するに、被告会社と共和興業との有価証券取引が、買付価格を過大に仮装して被告会社に損失を発生させ、あるいは売付価格を過少に仮装して被告会社の利益を隠匿するための不正工作であって、脱税のための仮装相対取引であることは本件証拠上明白であるから、被告会社と共和興業との間の取引を否認した上、共和興業名義で行った買付け及び売付けをそれぞれ被告会社の買付け及び売付けと認定して、仕入高及び売上高を算定することは正当であり、その仕入高及び売上高の算定に被告人前田の取得分の金額が影響を与える余地はなく、右金額を仕入高に加算し、あるいは売上高から減算することはできない。さらに、右被告人前田に対し支払った金額の損金性についてみるに、その金額、決定方法、当事者の認識等によれば、これが前記の脱税工作に対する報酬であることは疑いがなく、このような脱税報酬は収益に必要な経費ではなく、損金に算入することはできない。弁護人の主張は理由がない。

五  控除所得税額について

なお本件証拠上認定できる受取利息に係る源泉所得税額は七七六万七五四三円で、受取配当に係る源泉所得税額は八二万九八一七円であり、従って法人税額から控除される所得税額は八一八万二四五一円となる。その結果被告会社の所得金額は二二億四二〇六万六六二八円、法人税額は九億六一六四万八一〇〇円と算出されるが、訴因の拘束を受けるため、法人税額は九億六〇八二万一五〇〇円の限度で認定する(別紙1修正損益計算書、同2脱税額計算書参照)。

(法令の適用)

被告人宮崎の判示所為は刑法六〇条、法人税法一五九条一項に、被告人前田の判示所為は刑法六五条一項、六〇条、法人税法一五九条一項にそれぞれ該当するので、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で被告人宮崎を懲役二年六月に、被告人前田を懲役一年にそれぞれ処し、同被告人に対しては刑法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予することとする。

また、被告人宮崎の判示所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社に対しては法人税法一六四条一項により同法一五九条一項の罰金刑を科し、情状により同条二条を適用した金額の範囲内で被告会社を罰金二億五〇〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

本件は、有価証券取引等により多大な利益を得ていた被告会社が、九億六〇〇〇万円余りの法人税を免れたという事案であるが、ほ脱税額は巨額であり、ほ脱率も一〇〇パーセントにのぼる上、その犯行の態様も、被告会社の有価証券取引につき架空名義を使用したり、粉飾決算により架空利益の計上をもくろむ企業側に有利な相対取引をして被告会社側に損失の発生を仮装したり、被告人前田の経営する共和興業との間に仮装の相対取引をしたりするなど、極めて計画的かつ巧妙で、悪質であるし、さらに、本件犯行の社会的影響にも軽視しがたいものがあり、被告人らの刑事責任は重大であるといわねばならない。

被告会社及び被告人宮崎についてみると、本件犯行の動機は、従前、被告会社が大和証券から簿外で損失を預かっていた関係の下で、被告会社独自の有価証券取引による利益が右損失で隠されていたのに、大和証券が迷惑料を支払って右関係を解消するに伴い右利益や右迷惑料が表面化するのを恐れたというのであって、事業拡大資金の蓄積を図る目的に特に同情の余地はないこと、犯行の役割の面では、主犯として各脱税工作を自ら積極的に実行していること等の不利な情状があり、これらの情状に、被告人宮崎が本件脱税を決意するに至った経緯においては、被告会社に簿外損失を預けたり、粉飾決算をもくろむ企業に被告会社を紹介したりするなどの大和証券の行為が少なからぬ影響を及ぼしていると認められること、被告会社は本件犯行後、修正申告の上、本事業年度分の本税、附帯税を支払済みであり、前年度分も同様に支払っていること、被告会社は本件の処理が完了後は解散予定であり、再犯の恐れは認められないこと、被告人宮崎には前科がなく、本件犯行を反省悔悟していること、その他被告人宮崎の年齢、健康状態、既に受けた社会的制裁等本件全証拠から認められる被告会社及び被告人宮崎のため有利に斟酌すべき情状を総合すれば、被告会社及び被告人宮崎に対しては主文掲記の各刑に処するのが相当であり、被告人宮崎の刑の執行を猶了することはできない。

次に、被告人前田についてみるに、その犯行の動機は、脱税の謝札目当てであること、犯行への関与の態様は、積極的であり、所得隠蔽額も一一億円を超える大規模なものであること、右脱税工作により謝礼金として約一億円を取得していること等は不利な情状であるが、他方、その役割は被告人宮崎に対比すれば従属的であること、前科がなく、本件犯行を反省していること、高齢で健康状態も優れないこと等の同情すべき情状も認められるのて、これら被告人前田のため斟酌すべき一切の情状を考慮し、主文掲記の刑に処し、その執行を猶予するのを相当と認めた次第である。

(求刑 被告会社につき罰金三億円、被告人宮崎につき懲役三年、被告人前田につき懲役一年)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 稲田輝明 裁判官 柴田秀樹 裁判官 山田明)

別紙1

修正損益計算書

〈省略〉

別紙2

脱税額計算書

〈省略〉

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